毛穴の開き
毛穴のひらきは、性別や年齢を問わず、多くの方が抱える肌の悩みのひとつです。インターネットにはたくさんの情報が溢れていますが、その中には「これは正しいのだろうか?」と首を傾げたくなるような不正確な情報や、表面的な解説に終始しているものも少なくありません。
日々の診療で患者さんとお話していると、「どうして私の毛穴はひらいてしまったのでしょう」「何をしても改善しない」といった声を聞くことがよくあります。毛穴の悩みは、見た目の問題だけでなく、肌触りや化粧ノリにも影響します。
今回は、この毛穴のひらきについて、皮膚科専門医の立場から、その原因から最新の治療法まで、できるだけ科学的な根拠に基づいてお話ししたいと思います。
毛穴がひらく、その多角的な原因とは
毛穴のひらきは、実は単一の原因で起こるわけではありません。複数の要因が複雑に絡み合って生じていることがほとんどです。大きく分けて、以下の3つの主要な原因が考えられます。
1.皮脂の過剰分泌
特にTゾーン(額から鼻にかけて)や頬に目立つ毛穴のひらきは、皮脂腺から分泌される皮脂が過剰になることが主な原因です。皮脂が毛穴に詰まり、酸化して角栓となったり、毛穴が押し広げられたりすることで目立つようになります。思春期から成人にかけては、ホルモンの影響で皮脂分泌が活発になりやすく、毛穴が目立ちやすい時期とされています。:
2.加齢による肌のたるみ
30代後半以降になると、肌のハリや弾力を保つコラーゲンやエラスチンが減少して、皮膚がたるみ始めます。このたるみによって、丸い毛穴が下方へ引っ張られ、楕円形やしずく型にひらいて見えるようになることがあります。これはいわゆる「たるみ毛穴」とも呼ばれ、肌全体のたるみと密接に関連しているものです。
3.毛穴周辺の器質的な変化
毛穴の周りの皮膚が厚くなったり、ターンオーバー(肌の新陳代謝)が乱れたりすると、毛穴の出口が詰まりやすくなり、毛穴そのものが目立つようになります。また、毛穴の内部にある立毛筋と呼ばれる筋肉の活動も毛穴の開閉に関与していると言われています。
このように、毛穴のひらきの原因は多岐にわたりますが、特に皮脂の過剰分泌が関与しているケースが多いです。実際、複数の研究でも、過剰な皮脂分泌と毛穴の拡大との関連性が指摘されています。
では、皮脂分泌を抑える方法には何があるのでしょうか。実はボツリヌス毒素を皮内に注射することで皮脂腺の活動が抑制され、皮脂分泌の減少や毛穴サイズの縮小が見られたという報告があります。顔の毛穴の拡大と脂漏症(しろうしょう)に悩む患者を対象とした研究では、ボツリヌス毒素を皮内注射した顔面で、皮脂スコアと毛穴スコアの有意な減少が認められ、その効果は4ヶ月間持続したという報告もあります [Sayed KS et al. 2021]。
毛穴のひらきに対する医療機関でのアプローチ
1.レーザー・光治療
レーザーや光治療は、毛穴のひらきに対して非常に有効な選択肢の一つです。
ピコ秒レーザー(MLA付き)や非蒸散型フラクショナルレーザー
最近の研究では、1064nmピコ秒レーザーのフラクショナルマイクロレンズアレイ(MLA)付き照射と、1565nm非蒸散型フラクショナルレーザーを比較したランダム化比較試験が行われています。この研究では、顔の毛穴の拡大に悩む患者さんに対し、2週間間隔で3回施術を行ったところ、どちらのレーザーも施術2ヶ月後の毛穴数が有意に減少したと報告されています[Liu X et al. 2024]。
当院では、Nanostar Rというルビーレーザーを導入しています。フラクショナルモードでの照射によりコラーゲン産生を促し、肌の再生を活性化させます。これにより、肌のハリや弾力が回復し、毛穴のひらきが目立ちにくくなる効果が期待できるとされています。
IPL(Intense Pulsed Light)とPDT(Photodynamic Therapy)
皮脂の過剰分泌による毛穴のひらきや脂漏症(いわゆるオイリー肌)に対しては、IPLと光線力学療法(PDT)を組み合わせた治療も有効と報告されています。ある研究では、脂漏症の患者さんに対しIPL単独治療と比較してIPL-PDTが皮脂分泌を有意に抑制し、毛穴サイズを減少させる効果があることが示されました[Wang D et al. 2024]。ただし、日本ではPDTを行う美容クリニックはおそらくないのではないでしょうか。海外の文献なので、参考情報として記載いたしました。
2.ボツリヌス毒素注射(マイクロボトックス)
ボツリヌス毒素(Botulinum Toxin Type A; BoNTA)は、表情ジワの改善でよく知られていますが、皮内に少量ずつ注射することで、皮脂腺の活動を抑制し、毛穴を縮小させる効果も期待できます。これは通称「マイクロボトックス」や「スキンボトックス」と呼ばれる施術です。
皮内注射とマイクロニードリング補助注射の比較
毛穴の拡大に対する皮内ボツリヌスA毒素注射と、マイクロニードリング(極細の針で肌に微細な穴を開ける治療。ダーマペン等です。)でボツリヌスA毒素の浸透を補助する治療法を比較した臨床試験があります。この研究では、両治療法ともに毛穴の見た目を改善するのに効果的であり、両者の間に有意な効果の差は見られなかったと結論付けられています[Iraji F et al. 2025]。つまり、どちらの方法も同じくらい有効であるということです。皮内注射は直接皮脂腺にアプローチし、マイクロニードリングはコラーゲン生成を刺激しつつボツリヌスの浸透を助けることで、肌の質感改善にも寄与する可能性があります。当院では、より痛みの少ないように、ターゲットクールを用いた施術を試みています。この点についてはまた別の記事で触れたいと思います。
ヒアルロン酸との組み合わせ
ボツリヌスA毒素とヒアルロン酸の組み合わせ治療に関する研究もみられます。特に注目すべきは、脂性肌の方にはボツリヌスA毒素単独治療が、一方、乾燥肌や毛穴周囲の弾力低下が目立つ方には、ヒアルロン酸との併用がより良い結果をもたらす可能性が示唆された研究です[Vachiramon V et al. 2025]。これは、毛穴のひらきの原因に応じて、最適な注入製剤と注入量を適切に選択することの重要性を示していると言えます。私も、患者さん一人ひとりの肌質や毛穴の状態をしっかりと見極めて、最も効果的な方法を提案できるよう心がけています。
3.ケミカルピーリング
サリチル酸マクロゴールピーリングは、古い角質や毛穴に詰まった角栓を除去し、肌のターンオーバーを正常化させる治療です。これにより、毛穴の詰まりが改善され、毛穴が目立ちにくくなる効果が期待できます。
4.エレクトロポレーション
当院のCLEAN&BLOOM(クリーン&ブルーム)などに代表されるエレクトロポレーションは、電気の力で肌に微細な穴を開け、通常では浸透しにくい美容成分(ビタミンC誘導体、トラネキサム酸、ヒアルロン酸など)を肌の奥深くまで浸透させる施術です。毛穴のひらきに対しては、皮脂分泌を抑制するビタミンC誘導体や、肌のバリア機能を高める成分を導入することで、肌質を改善し、毛穴を目立ちにくくする効果を狙います。毛穴クレンジングやプラズマ照射と組み合わせるのも良いと思われます。
5.ホームケア製品
日々の適切なスキンケアも、毛穴のひらきを改善し、再発を防ぐ上で非常に重要です。当院では、ゼオスキンヘルスやガウディスキンといった医療機関専売のスキンケア製品を取り扱っています。これらの製品は、ピーリング効果のある成分やレチノール(ビタミンAの一種)、抗酸化成分などが配合されており、肌のターンオーバーの促進・皮脂分泌のコントロール・コラーゲン生成を促すことが知られています。
当院での毛穴のひらきに対する治療アプローチ
毛穴のひらきでお悩みの方が当院に来られた場合、私はまず、毛穴がひらく主な原因が何であるかを診断することから始めます。皮脂の過剰分泌型なのか、たるみ型なのか、あるいは複合しているのかを見極めることが、効果的な治療への第一歩となると考えているためです。
その上で、以下のような複数の治療法を組み合わせることを推奨することがあります。例えば、
- ルビーフラクショナル スタンダード:レーザーで真皮のコラーゲン生成を促し、ハリを取り戻します。
- ターゲットクール(TULIENNE DL40やボトックス): TULIENNE DL40という製剤を真皮浅層まで導入しコラーゲン生成を強力に促します。ボトックスも使用可能です。
- エレクトロポレーション トータルケア: 毛穴クレンジングとプラズマ照射で肌を整え、必要な美容成分を深部へ届けます。
- ピーリング(サリチル酸マクロゴール): 古い角質を除去し、肌のターンオーバーを正常化させ、毛穴の詰まりを防ぎます。
これらの治療を組み合わせることで、皮脂の抑制、角質の除去、コラーゲン生成の促進、肌の引き締めといった多角的なアプローチが可能となります。もちろん、ご自宅での適切なスキンケアも非常に大切ですので、患者さんの肌質やライフスタイルに合わせたホームケア製品のご提案も行っています。
まとめ
- 毛穴のひらきの原因は、皮脂の過剰分泌、加齢による肌のたるみ、毛穴周辺の構造変化などが複雑に絡み合っていることが多いものです。
- 医療機関では、レーザー治療、光治療、ボツリヌス毒素注射、ケミカルピーリング、エレクトロポレーションなどといった治療法で毛穴のひらきにアプローチすることが可能です。
- 適切な治療計画を立てるだけでなく継続的なホームケアを取り入れることが、毛穴の悩みを解決する上で非常に重要になります。
肌の悩みに真摯に向き合い、最新の知見と技術を駆使して、患者さん一人ひとりの「なりたい肌」を共に目指すことが私の美容医療への想いです。
参考文献
1. Liu X, Zeng R, Liu Y et al. "Comparison of the 1064-nm picosecond laser with fractionated microlens array and 1565-nm non-ablative fractional laser for the treatment of enlarged pores: a randomized, split-face, controlled trial." Lasers in medical science. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38396012/
2. Wang D, Yan Y, Wang P et al. "A prospective, split-face, randomized controlled trial of intense pulsed light-photodynamic therapy for seborrhea." Photodiagnosis and photodynamic therapy. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38316341/
3. Iraji F, Moeini R, Abedini M et al. "Comparison of Intradermal Versus Microneedling-Assisted Botulinum A Toxin Injection for Enlarged Facial Pores: A Randomized Clinical Trial." Journal of cosmetic dermatology. 2025. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40522143/
4. Sayed KS, Hegazy R, Gawdat HI et al. "The efficacy of intradermal injections of botulinum toxin in the management of enlarged facial pores and seborrhea: a split face-controlled study." The Journal of dermatological treatment. 2021. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31865815/
5. Vachiramon V, Chirasuthat S, Boonpethkaew S et al. "A Study of Combined Onabotulinumtoxin A and Hyaluronic Acid Filler for the Treatment of Enlarged Facial Pores." Toxins. 2025. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39852991/
- 執筆:増田泰之(皮膚科専門医)
- 武庫之荘ますだ皮膚科・美容皮膚科クリニック 院長
