ルビーフラクショナル
今回はルビーフラクショナルの効果や特性について説明します。この治療は、色素性病変に対して効果が期待できる治療の一つです。
フラクショナルルビーレーザーはどのような色素性病変に効果が期待できるのでしょうか?
ルビーレーザーのメラニンに対する高い選択性と、フラクショナル技術の肌への優しさを組み合わせたフラクショナルルビーレーザーは、特に以下のような色素性病変の治療において有効性が期待されています。
後天性真皮メラノサイトーシス(Acquired dermal melanocytosis; ADM)
ADMは、真皮の深い層にメラニン色素を持つ細胞(メラノサイト)が存在することで生じるアザの一種で、両頬骨部などに左右対称に現れることが特徴です。日本皮膚科学会が作成した「美容医療診療指針」でも、ADMに対するレーザー治療は推奨度1(治療を希望する患者には、強く推奨する)とされており、レーザー治療は非常に有効な選択肢だと考えられます。特にQスイッチルビーレーザーやQスイッチNd:YAGレーザーが広く用いられ、良好な結果が得られることが多いです。
肝斑(かんぱん)
肝斑は、両頬などに左右対称に広がる淡褐色の色素斑で、紫外線やホルモンバランスの変化、摩擦などが悪化要因となることが指摘されています。肝斑へのレーザー治療は、特に注意を要する分野です。従来の強いレーザー照射は、かえって肝斑を悪化させるリスクがあるため、低出力のレーザートーニングなどが用いられてきました。
「美容医療診療指針」では、肝斑に対するレーザーやIPL(光治療)照射は推奨度2(条件によっては、行うことを弱く提案する)とされており、遮光や美白剤外用、内服など多様な保存的治療で十分な効果が得られない場合に、併用療法として行うことが推奨されることがあります。Lai D et al. (2022) のメタアナリシスでは、肝斑に対するレーザー治療の有効性は「不定の結果」とされており、治療効果は研究間で一貫しないことが示唆されます。そのため、施術者は機器の特性を習熟し、十分な説明と同意のもとで慎重に治療を行うことが不可欠です。私の経験でも、ルビーフラクショナルは肝斑に有効なこともありますが、悪化する場合もあります。
当院ではより安全に肝斑を治療できるよう、ルビーレーザーを低フルエンスで照射する「ルビートーニング」を肝斑治療の選択肢の一つとして採用しています。
炎症後色素沈着(PIH)
ニキビ跡や外傷、やけどなど、皮膚の炎症後に一時的に生じる色素沈着です。色黒の肌(FitzpatrickスキンタイプIII~VI)では特に、レーザー治療後の炎症後色素沈着のリスクが高くなることが指摘されています (Sowash M, Alster T, 2023)。そのため、適切なパラメーター設定が不可欠であり、フラクショナルレーザーは周囲の皮膚を温存することでこのリスクを軽減する効果が期待できます。
目の下の色素沈着型クマ
目の下のクマは、単に睡眠不足だけでなく、色素沈着や皮膚の薄さ、血管の透けなど、複数の要因が絡み合って生じることがあります。特に茶クマと呼ばれる色素沈着型のクマには、フラクショナルルビーレーザーが有効な治療法の一つとして検討されるべきだと考えます。Xu TH et al. (2016) の研究では、30名の目の下の色素沈着型クマの女性に対し、694 nmフラクショナルQスイッチルビーレーザーを8回照射した結果、約89%の患者で「中程度から著しい」改善が認められ、約93%の患者が治療に満足したと報告されています。私の経験でも、頬の内側のエリアでは良い結果が得られている感触があります。
ルビーレーザー治療を受ける前に理解しておくべきこと
色素性病変の治療において、最も重要なのは正確な診断です。肉眼やダーモスコピーによる診断が困難な場合は、皮膚悪性腫瘍の可能性も考慮し、生検による病理組織検査を行う必要があると考えられます。「美容医療診療指針」では、「良性小腫瘍のレーザー治療においても皮膚悪性腫瘍が含まれている可能性を十分に説明し、肉眼やダーモスコピーで良性小腫瘍の診断が可能なものに限られるため、行うことを弱く推奨する」とされています。不適切なレーザー治療により悪性腫瘍の診断を困難にする危険性があるため、慎重な対応が必要です。
また、治療後は適切なアフターケアが不可欠な要素です。特に、炎症後色素沈着のリスクを最小限に抑えるためには、徹底した遮光(日焼け止めの使用、帽子や日傘など)と保湿ケアが重要です。当院では、治療効果を最大限に引き出し、安全性を高めるためのスキンケア製品についても提案しています。
まとめ
1. フラクショナルルビーレーザーは、メラニン選択性の高いルビーレーザーの特性と、皮膚への負担を軽減するフラクショナル技術を組み合わせた治療法として、当院でも積極的に導入しています。
2. 後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)、肝斑、炎症後色素沈着、目の下の色素沈着(茶クマ)など、さまざまな色素性病変の治療において有効性が期待される治療法です。
3. 当院では、Nanostar R(ナノスターアール)を導入し、「ルビーフラクショナル」「ルビートーニング」「ルビースポット照射」といった多様な治療オプションを提供しています。正確な診断、丁寧な施術、そして適切なアフターケアを徹底することで、患者さん一人ひとりに最適な治療結果を提供することを目指しております。
各色素性病変に関するより詳細な情報や治療の進歩については、また別の記事でご紹介する予定です。
参考文献
①大慈弥裕之ほか.「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」日本皮膚科学会. 2022. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/biyo_2022_summary.pdf
②Xu TH, Li YH, Chen JZ et al. "Treatment of infraorbital dark circles using 694-nm fractional Q-switched ruby laser." Lasers in medical science. 2016;31(9):1309-1314. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27522505/
③Lai D, Zhou S, Cheng S et al. "Laser therapy in the treatment of melasma: a systematic review and meta-analysis." Lasers in medical science. 2022;37(3):1535-1557. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35122202/
④Sowash M, Alster T. "Review of Laser Treatments for Post-Inflammatory Hyperpigmentation in Skin of Color." American journal of clinical dermatology. 2023;24(2):207-220. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36781686/
- 執筆:増田泰之(皮膚科専門医)
- 武庫之荘ますだ皮膚科・美容皮膚科クリニック 院長
