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表情じわ


今回は、ボトックスが有名な表情じわについてお話をしたいと思います。

表情じわは、表情筋の収縮によってできるしわであり、インターネットで散見される「小じわ」や「乾燥じわ」とは区別されます。表情じわは表情筋の動きが繰り返されることで刻み込まれるものとして明確に分類されていることが多いです。

 

 

 

表情じわのメカニズムとその種類

私たちが喜びや驚き、怒り、悲しみといった感情を表現する際、顔の「表情筋」が収縮します。この表情筋の収縮が繰り返されることで、その上の皮膚に折り目がつき、やがてしわとして刻み込まれるのが表情じわです。若い頃は皮膚に十分な弾力があるため、表情を戻せばしわもすぐに消えていきます。しかし、加齢とともに皮膚の弾性が低下し、さらに紫外線の影響や乾燥が加わることで、表情筋の動きによってできた折り目が消えにくくなり、やがて深いしわとして定着することがあります。

特に有名なシワは、眉間(みけん)のしわ(考え事をしたり、集中したりする際に眉をひそめることでできる縦じわや横じわなど多数)、目尻のしわ(笑ったときにできる扇状のしわで、「カラスの足跡」とも呼ばれることがあります)、額(ひたい)のしわ(物を考えたり、驚いたりする際に眉を上げることでできる横じわ)、そして口元(くちもと)のしわ(特に口をすぼめたり、笑ったりする際にできる縦じわなど多数)などが挙げられます。

これに対し、乾燥や紫外線、加齢による真皮の弾力低下で現れるしわは、表情筋の動きとは直接関係なく、常に皮膚に現れている「静的(static)なしわ」や、乾燥によって一時的に目立つ「乾燥じわ」などと呼ばれます。表情じわは、放置すると静的しわへと移行することもあるため、適切なケアと治療が大切だと考えられます(もちろん、日々の継続は難しいと感じる方もいるかもしれませんので、ご自身のペースで取り組むことが大切です)。

表情じわの治療選択肢と当院の考え方

表情じわの治療で最も効果が期待できるのは、原因である表情筋の動きを一時的に抑制することだと考えられています。この目的で用いられるのが、ボツリヌス毒素(ボツリヌストキシン)注射です。また、しわが深く刻まれて溝のようになっている場合には、ヒアルロン酸注入も有効な選択肢となります。

当院では、患者さん一人ひとりのしわの状態やご希望、表情の癖などを詳しく診察し、自然な仕上がりを目指した治療計画を提案しています。主な治療法としては、ボツリヌス毒素注射とヒアルロン酸注入があります。

ボツリヌス毒素注射

ボツリヌス毒素は、表情筋の過剰な収縮を一時的に和らげることで、しわの形成を防ぎ、すでに刻まれたしわを目立たなくする効果があると言われています。ボツリヌス毒素注射は、世界中で広く行われている非外科的美容医療の一つで、表情じわの重症度を減らすことがすでに分かっています。

効果の持続期間については、一般的に3〜6ヶ月程度と言われていますが、体感では3~4ヶ月で再度治療が必要になることが多いです。眉間しわ治療におけるOnabotulinumtoxinAの効果持続期間を評価したメタアナリシスでは、投与後30日時点で84.2%の患者さんが最大収縮時のしわにおいて改善を認めています (Glogau R et al., 2012)。治療を継続することで、しわがつきにくい状態を維持しやすくなる傾向がみられます。また、眉間へのボツリヌス毒素注射によって眉が自然に上がる効果(brow lift)がみられることも、以前から指摘されています。IncobotulinumtoxinA(ゼオミン)を用いた眉間しわ治療の有効性と患者満足度に関する報告もあり、その効果が示されています (Lim JTE et al., 2017)。

ボツリヌス毒素製剤には、OnabotulinumtoxinA(ボトックス)、IncobotulinumtoxinA(ゼオミン)、PrabotulinumtoxinA(ナボタ)、AbobotulinumtoxinA(ディスポート)など多数の種類があり、それぞれ分子量や複合体蛋白の有無、拡散性などに違いがあります。ボツリヌス毒素はタンパク質であり、温度変化に弱いです。したがって輸入中の管理が適切に行われている製剤を使用しなければ効果にばらつきが出てしまいます。私の経験でも、韓国製のボトックスを使用したときに、稀に「効きが突然弱くなった」という症例に出会った経験があります。手技の違いの可能性もありますが、輸入時のコールド・チェーンが担保されていない製剤では、低頻度だとは思いますがこのようなリスクも考える必要があると考えています。当院ではコールド・チェーンの管理をしっかり行ってくれるアラガン社のボトックスビスタを採用しています。

ボツリヌス毒素製剤の副作用としては、全体で約16%に頭痛、局所の皮膚反応、一時的な眼瞼下垂や眉毛下垂など多数が報告されていますが、これらはほとんどが軽度で一時的なものとされています。当院では、患者さんの表情の癖を丁寧に診断し、最小限の注入量で最大限の効果が得られるように、細やかなデザインと注入手技を心がけています。これにより、不自然な表情になることなく、自然で若々しい印象を保てるよう配慮しています。

ヒアルロン酸注入

ボツリヌス毒素注射は筋肉の動きを抑えることでしわを改善しますが、すでに深く刻まれてしまったしわの溝そのものに対しては、ヒアルロン酸を注入して下から持ち上げることで治療を行います。
ヒアルロン酸はもともと体内に存在する成分であり、アレルギー反応のリスクも低い安全性の高い治療法と考えられます。当院では、皮膚の構造やしわの深さ、患者さんの表情筋の動きを詳細に評価し、自然な仕上がりと長期的な持続を目指して、最適なヒアルロン酸製剤と注入法を選んでいます。ボツリヌス毒素注射と組み合わせることで、より複合的なしわの改善が得られることも多いです。

当院では医師の経験と知識、そして患者さんとの丁寧なコミュニケーションが非常に重要であると考えており、事前のカウンセリングと丁寧な診察に十分な時間をかけ、患者さんが納得した上で治療を受けていただけるよう配慮しています。

まとめ

表情じわの特性: 表情筋の動きが繰り返されることでできるしわであり、加齢や紫外線などの影響でより定着しやすくなります。
ボツリヌス毒素注射: 表情筋の過剰な動きを抑制し、しわの形成を防ぐ治療法の一つと考えられます。副作用は軽度で一時的なものがほとんどですが、医師の技術が仕上がりに影響すると言われています。
ヒアルロン酸注入: 深く刻まれたしわや、口元のように動きの多い部位には非常に有効な選択肢であり、ボツリヌス毒素との併用でより複合的な改善も期待できます。

美しさは、健康な皮膚の上に成り立ちます。当院では、表面的な改善だけでなく、患者さんの皮膚全体と向き合い、長期的な視点での美しさと健康を追求することが重要だと考えています。

参考文献:
1. Glogau R, Kane M, Beddingfield F et al. "OnabotulinumtoxinA: a meta-analysis of duration of effect in the treatment of glabellar lines." Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.] (2012). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23106853/
2. Sundaram H, Shamban A, Schlessinger J et al. "Efficacy and Safety of a New Resilient Hyaluronic Acid Filler in the Correction of Moderate-to-Severe Dynamic Perioral Rhytides: A 52-Week Prospective, Multicenter, Controlled, Randomized, Evaluator-Blinded Study." Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.] (2022). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34608092/
3. Carruthers A, Carruthers J. "Eyebrow height after botulinum toxin type A to the glabella." Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.] (2007). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17241411/
4. Lim JTE, Loh DK, Soh K et al. "Efficacy and patient satisfaction with incobotulinumtoxinA for the treatment of glabellar frown lines." Singapore medical journal (2017). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27357317/
5. 日本皮膚科学会.「皮膚科領域における医療安全に関するガイドライン 2018」日本皮膚科学会. 2018.

  • 執筆:増田泰之(皮膚科専門医)
  • 武庫之荘ますだ皮膚科・美容皮膚科クリニック 院長