IPL
特定の波長範囲の光を肌に照射し、主にメラニンやヘモグロビンといった肌の色素成分に選択的に熱エネルギーを与え、多様な肌悩みを改善する光治療がIPLです(Babilas et al., 2010)。メラニンに吸収される光はシミやそばかすを薄くし、ヘモグロビンに吸収される光は赤ら顔や毛細血管拡張症を改善させます。また、光の熱作用は線維芽細胞を刺激し、コラーゲンの生成を促すことで、肌のハリや弾力性の向上にもつながると考えられています。当院で採用しているCellec Vは、このIPL治療器の一つです。
IPLは、どのような症状に効果が期待できるか?
IPLは光老化全般、具体的にはシミ、雀卵斑、血管病変、さらには肌質の改善に有効な治療法として位置づけられています(Sales AFS et al., 2022; Babilas P et al., 2010)。その効果は多岐にわたり、様々な研究で有効性が報告されています。
特に酒さの治療において、IPLとパルス色素レーザー(Vビームが有名です)は、共に75%以上の改善率を示すことがメタアナリシスで報告されていますが、両治療間に有意な差は認められません(Zhai Q et al., 2024)。両治療は酒さの赤みに対し、同等の高い改善効果を示すと考えられます。また、炎症性皮膚疾患、特に尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)や酒さの改善にも有効性が示されています(Cai Y et al., 2022)。これらの疾患は慢性的な炎症を伴うため、IPLの作用は炎症の抑制や皮脂腺の活動調整にも寄与すると考えられます。
またIPLは目の周りの皮膚の若返り、特に肌の弾力性の改善にも効果が期待できます(Kołodziejczak A, Rotsztejn H, 2022; Barikbin B et al., 2019)。Kołodziejczakらの研究(2022)では、目の周りの皮膚の弾力性改善においてIPLが効果を示したことが報告されています。また、アンケート調査では、IPL治療を受けた患者さんの多くが肌の弾力性の改善を実感したと回答しています。ただし、シワの量や深さの減少については、限定的な効果に留まる傾向が示されます。
肝斑治療においては、単独よりも複数の治療法を組み合わせることで良好な結果が得られるとされています(Neagu N et al., 2022)。IPLはメラニンに反応する特性があるため、肝斑治療に用いる場合は、かえって症状を悪化させないように慎重な設定と、内服薬や外用剤との併用が重要となります。
当院で採用しているCellec Vは、9種類のフィルターを搭載し、それぞれの肌悩みに合わせて最適な波長を選択できる点が大きな特徴です。例えば、シミや雀卵斑といった表在性の色素沈着には短い波長のフィルターを、赤ら顔や毛細血管拡張症といった血管病変には長い波長のフィルターを使用します。肌のトーンアップやハリの改善を目的とする場合でも、特定の波長フィルターを用いることで効果が期待できます。特に、色ムラのない均一な肌トーンを目指す上では、この細やかな波長選択が重要です。さらに、毛穴の目立ちや肌のキメの乱れといった悩みに対しても、IPLの熱作用によるコラーゲン生成促進効果が期待でき、全体的な肌質の改善につながります(Sales AFS et al., 2022)。
IPL治療における注意点
IPL治療は一般的に安全性が高いとされていますが、いくつかの注意点があります。治療後に紅斑(こうはん)や浮腫(ふしゅ)といった一時的な副作用が生じる場合があります(Kołodziejczak A, Rotsztejn H, 2022)。これらの症状は通常、数時間から数日で自然に消失します。治療部位に一時的に色素が濃くなる現象(炎症後色素沈着)が生じることもありますが、これは適切なアフターケアと時間経過で改善することがほとんどです。稀に水ぶくれなどの重篤な副反応が生じる可能性もありますが、これは主に不適切な設定や冷却不足が原因となる場合が多く、施術者の専門知識と経験が非常に重要になります。
痛みに関しては、メタアナリシスにおいてIPL治療はパルス色素レーザーと比較して痛みが強い傾向があると報告されています(Zhai Q et al., 2024)。そのため、冷却システムの性能や施術者の技術が痛みの軽減に大きく影響します。当院のCellec Vはリアルタイムで皮膚の温度をモニタリングし、常に安定した冷却を供給できる高性能な冷却システムを搭載しています。治療中の痛みを最小限に抑えつつ、表皮の安全性を最大限に保護することが可能です。
治療効果を最大限に引き出し、かつ安全性を確保するためには、適切な治療回数と間隔が重要です。改善したい症状の種類や程度によって異なりますが、多くの研究では3〜7回程度の複数回の治療が効果的であるとされています(Sales AFS et al., 2022; Kołodziejczak A, Rotsztejn H, 2022)。通常は肌のターンオーバーに合わせて、2〜4週間おきの治療を数回継続することが推奨されます。シミが濃く浮き上がってくるいわゆる「かさぶた」のような反応がないタイプの光治療では、数回の治療で徐々に効果が現れるため、継続的な治療が重要です。
当院では、患者さん一人ひとりの肌の状態や悩みを詳細に診察し、Cellec Vの豊富なフィルターと照射設定を組み合わせ、最適な治療プランを提案します。特に、痛みの感じ方には個人差があるため、患者さんの状態に合わせて冷却の強度や照射設定を細かく調整します。また、肝斑と診断された方に対しては、IPL単独での治療ではなく、トラネキサム酸などの内服薬や外用剤との併用、あるいは他のレーザー治療との組み合わせを検討することが多くなります。IPLは肝斑に対して有効ではありますが、逆に悪化させないよう慎重な判断と設定が求められます。当院では、治療後の日焼け対策とスキンケアについても指導を行います。
まとめ
IPL治療、特にCellec Vは、多岐にわたる肌悩みに対応できる汎用性の高い機器です。
① シミ、雀卵斑、赤ら顔、肌のハリ不足といった光老化の兆候から、酒さや尋常性ざ瘡などの炎症性疾患の改善まで、幅広い効果が期待できます。
② 治療の安全性は高いとされますが、一時的な紅斑や浮腫、色素増強などの副反応が生じる可能性があり、治療後の適切なケアが重要になります。
③ 当院ではCellec Vの優れた冷却機能と豊富なフィルターを活用し、患者さん個々の肌状態に合わせたオーダーメイドの治療計画を立案することで、効果的かつ安全な治療を提供することを目指しています。
参考文献
①Zhai Q, Cheng S, Liu R et al. "Meta-Analysis of the Efficacy of Intense Pulsed Light and Pulsed-Dye Laser Therapy in the Management of Rosacea." Journal of cosmetic dermatology. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39240125/
②Kołodziejczak A, Rotsztejn H. "Efficacy of fractional laser, radiofrequency and IPL rejuvenation of periorbital region." Lasers in medical science. 2022. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33988812/
③Neagu N, Conforti C, Agozzino M et al. "Melasma treatment: a systematic review." The Journal of dermatological treatment. 2022. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33849384/
④Sales AFS, Pandolfo IL, de Almeida Cruz M et al. "Intense Pulsed Light on skin rejuvenation: a systematic review." Archives of dermatological research. 2022. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34609598/
⑤Babilas P, Schreml S, Szeimies RM et al. "Intense pulsed light (IPL): a review." Lasers in surgery and medicine. 2010. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20166155/
⑥Cai Y, Zhu Y, Wang Y et al. "Intense pulsed light treatment for inflammatory skin diseases: a review." Lasers in medical science. 2022. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35913536/
⑦Barikbin B, Akbari Z, Vafaee R et al. "The Efficacy of IPL in Periorbital Skin Rejuvenation: An Open-Label Study." Journal of lasers in medical sciences. 2019. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32021676/
- 執筆:増田泰之(皮膚科専門医)
- 武庫之荘ますだ皮膚科・美容皮膚科クリニック 院長
