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花粉皮膚炎と呼ばれるものについて


春は、花粉症の症状に悩む患者さんが多くなる時期です。くしゃみや鼻水、目の痒みといった一般的な症状だけでなく、皮膚のトラブルで受診される方も増える時期です。花粉が飛散する季節はアトピー性皮膚炎の症状が悪化しやすい時期とも重なりますので、注意が必要です。花粉による皮膚炎は俗に花粉皮膚炎と呼ばれますが、じつは皮膚科学的に厳密な言葉ではありません。花粉によるアレルギー性接触皮膚炎のことを指していると思われます。アレルギー性接触皮膚炎は皮膚に触れたものに対する遅延型アレルギー反応ですが、そのなかでも空気中の花粉類との接触で生じるものを空気伝搬性接触皮膚炎 airborne contact dermatitis といいます。

花粉によるairborne contact dermatitis、いわゆる花粉皮膚炎は、花粉が皮膚に直接触れることでアレルギー反応を起こし、湿疹などの皮膚炎を生じる疾患です。原因となる花粉はスギだけでなく、ヒノキ、シラカンバ、ブタクサなどでも報告があります。

 

 

 

花粉接触皮膚炎の病態と症状

接触皮膚炎は、外部から皮膚に接触した物質によって起こる湿疹・皮膚炎を指します(1)。大きく分けると、肌への刺激が直接原因となる「刺激性接触皮膚炎」と、特定のアレルゲンが原因となる「アレルギー性接触皮膚炎」の二種類があります。花粉による皮膚炎は、後者のアレルギー性接触皮膚炎であることが多いです。

アレルギー性接触皮膚炎は、ごく微量のアレルゲンが皮膚に触れることで発症することが特徴です(1)。花粉は高分子量のタンパク質で、花粉そのものあるいは花粉に含まれる成分が皮膚のタンパク質と結合してアレルゲンとなり、アレルギー反応を引き起こすと考えられます(1)(3)。

症状は、花粉が付着しやすい顔面や首、露出している腕などに多くみられます。具体的には、痒みを伴う紅斑(赤み)、丘疹(ざらざらした感じ)などが現れます(1)。目の周りや首は腫れや浮腫(むくみ)が顕著に出る場合もあります(1)。

特にアトピー性皮膚炎患者は皮膚のバリア機能が低下しているため花粉が皮膚に侵入しやすく、花粉皮膚炎を発症しやすい傾向にあります(2)。アトピー性皮膚炎の悪化因子として花粉が挙げられていることからも、花粉シーズンは特に注意が必要です(2)。ガイドラインでも、顔面などに生じる空気伝搬性アレルゲン(エアロアレルゲン)による皮膚炎として、スギなどの花粉が原因となる場合があると指摘されています(1)。

診断について

花粉接触皮膚炎の診断は、症状が現れる時期が花粉の飛散時期と一致するか、花粉が付着しやすい部位に症状が集中しているかなど、詳しい問診が手がかりとなります。見た目だけでは、アトピー性皮膚炎の悪化や、他の刺激による湿疹と区別が難しいことも少なくありません。

検査ではパッチテストが行われることがあります。
アトピー性皮膚炎の成人患者を対象とした研究では、ダニや猫のフケ、様々な花粉(イネ科植物、カバノキ、ヨモギなど)のアレルゲン抽出物を用いたパッチテストで陽性反応を認めています(3)(4)(5)。

パッチテストは、Ⅳ型アレルギーを起こす原因物質を確定するための有力な検査ですが、手間と時間がかかりますし、一般的な保険診療のパッチテストでは花粉は試薬として用意されていません。しかし、現時点では、原因を解明するためにこれ以上に確実で有用な検査方法は他に存在しません(1)。
ちなみに、採血で分かるアレルギーはⅠ型アレルギー(蕁麻疹やアナフィラキシーに関係)であり、花粉皮膚炎の診断に直接の関係はありません。

治療と予防

花粉接触皮膚炎の治療の基本は、原因となっている花粉との接触を避けることです。炎症を抑えるための治療や、皮膚のバリア機能を整えるケアが大切です。花粉症の治療・予防とかぶる部分が多いので、抵抗のある方は少ないと思います。

薬物療法
ステロイド外用薬

炎症を速やかに抑えるために、症状の程度に応じた強さのステロイド外用薬を使用します(1)(2)。炎症が強い場合は、適切なランクのステロイド外用薬で初期治療を行い、症状が落ち着いたら徐々に弱いものに切り替えるか、塗布回数を減らすなどの調整を行います(2)。

抗ヒスタミン薬

痒みが強い場合は、痒みを軽減するために抗ヒスタミン薬の内服を併用します (1)(2)。

スキンケア

アトピー性皮膚炎の有無にかかわらず、皮膚のバリア機能が低下している場合が多いです。保湿剤を適切に使用することで、皮膚の水分量を保ち、バリア機能を回復・維持することが重要です。保湿剤はアレルゲンの侵入を防ぎ、痒みを抑える効果も期待できます。炎症が治まった後も、保湿ケアは継続することが推奨されます(2)。

シダキュアに代表される花粉の減感作治療「舌下免疫療法」はアレルギーの根本的な治療ですが、一般的にⅠ型アレルギーに対する治療とされています。Ⅳ型アレルギーである接触皮膚炎にどこまで効果があるかは定かではありません。今後の研究が待たれます。

花粉シーズンは、アレルギー性鼻炎や結膜炎、そして皮膚炎も悪化しやすい時期です。アレルギー性鼻炎が難治性の場合、耳鼻科の専門医と連携して治療を進めることも大切です(2)。

まとめ

  1. インターネット上で情報が多く見られる「花粉皮膚炎」は、「花粉によるアレルギー性接触皮膚炎(その中でもAirborne contact dermatitisに分類される)」のことを指していると思われます。花粉が皮膚に触れることでアレルギー反応が起こり、顔や首などの露出部に湿疹を生じる皮膚炎です。アトピー性皮膚炎患者は皮膚バリア機能が低下しているため、特に発症しやすい傾向があります。
  2. 診断には、花粉の飛散時期や症状の部位に関する詳しい問診・経過観察に加え、パッチテストが原因特定のために有効な検査です。実際には、医療機関によりパッチテストは実施できないか、困難であることがあります(当院でも現在は実施できません、申し訳ございません)。
  3. 治療の基本は花粉からの回避と、ステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬による対症療法です。保湿剤によるスキンケアで皮膚のバリア機能を整えることも非常に重要です。

花粉による皮膚のトラブルは、日常生活の質を大きく低下させます。適切な診断と治療、そして日々の予防策で、つらい花粉シーズンを乗り切ることが可能です。少しでも気になる症状があれば、自己判断せずに皮膚科専門医にご相談ください。

参考文献

(1) 「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」日本皮膚科学会. 2020.
(2) 「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024年版」日本皮膚科学会. 2024.
(3) Darsow U, Vieluf D, Ring J "Evaluating the relevance of aeroallergen sensitization in atopic eczema with the atopy patch test: a randomized, double-blind multicenter study. Atopy Patch Test Study Group." Journal of the American Academy of Dermatology 1999;40(2 Pt 1):187-93. doi:10.1016/s0190-9622(99)70186-6 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10025743/
(4) Darsow U, Behrendt H, Ring J "Gramineae pollen as trigger factors of atopic eczema: evaluation of diagnostic measures using the atopy patch test." The British journal of dermatology 1997;137(2):201-7. doi:10.1046/j.1365-2133.1997.18061889.x https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9292067/
(5) Darsow U, Laifaoui J, Kerschenlohr K et al. "The prevalence of positive reactions in the atopy patch test with aeroallergens and food allergens in subjects with atopic eczema: a European multicenter study." Allergy 2004;59(12):1318-25. doi:10.1111/j.1398-9995.2004.00556.x https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15507101/

  • 執筆:増田泰之(皮膚科専門医)
  • 武庫之荘ますだ皮膚科・美容皮膚科クリニック 院長