顔の赤み

「顔の赤みが気になる」「いつも顔がほてっているように感じる」という方も多いのではないかと思います。インターネットで「赤ら顔」と検索すると、様々な情報が溢れていますが、その原因は一種類ではなく、また治療法も多岐にわたります。というのも、赤ら顔という言葉には非常にたくさんの皮膚疾患が含まれているからです。最近になり、酒さという皮膚疾患が知られるようになったようですが、これでもごく一部です。本来顔の赤みというのは皮膚科医でも診断が難しい部類に入る主訴(症状)です。医療者による情報発信でも、「顔の赤みは全部酒さ」だとでも思っているような情報が多く見られます。
今日のブログでは、この「赤ら顔」についてお伝えしたいと思います。
赤ら顔の原因は一つではありません
「赤ら顔」という言葉でひとくくりにされがちですが、医学的に見ると、その原因は多岐にわたります。代表的なものとしては、酒さ(しゅさ)、脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)、接触皮膚炎(せっしょくひふえん)、ニキビ痕の赤み、アトピー性皮膚炎、さらには全身の病気の一症状として現れるものもあります。
特に、多くの赤ら顔の原因となっているのが酒さです。酒さは、顔の頬や鼻、額、あごなどに持続的な赤みや毛細血管の拡張が見られ、時にはニキビに似たブツブツ(丘疹・膿疱)ができる慢性的な炎症性皮膚疾患です。肌が敏感になり、刺激を感じやすいのも特徴として知られています。
酒さの詳しい原因はまだ全てが解明されているわけではありませんが、いくつかの要因が複合的に関与していると考えられています。遺伝的な体質に加え、皮膚の血管の異常、免疫システムの異常な反応、皮膚に常在するニキビダニ(Demodex folliculorum)の過剰な増殖などが指摘されていますね。実際、ニキビダニの密度が高いほど炎症性疾患、例えば酒さとの関連性が高いという報告もあります。また、神経血管系の調節異常や皮膚のバリア機能の低下も関係しているとされています [3, 5]。しかし、昨今酒さの原因はニキビダニ!などと言い過ぎな医師による発信も目立ちます。このようなある意味センセーショナルな発信の仕方をするのはいかがなものかと、私は疑問を持っていますが・・・。
最近では、アトピー性皮膚炎の治療で使われる生物学的製剤デュピルマブの投与中に、顔や首に紅斑が生じるケースも報告されており、その中には酒さとの関連が示唆されるものもあるようです [1]。このように、思わぬところで顔の赤みが現れることもあるのは、皮膚科医として常に念頭に置いておくべきポイントだと私は考えています。
赤ら顔へのアプローチ:内服薬と光・レーザー治療
赤ら顔、特に酒さの治療は、症状の原因やタイプに応じて様々な方法を組み合わせることが大切です。
1. 内服薬による治療
まず、内服薬で炎症を抑えたり、症状をコントロールしていく方法があります。
抗生物質(ドキシサイクリンなど): 少量持続投与で炎症を抑える目的で使われます。
低用量イソトレチノイン: 重症の酒さや、他の治療で改善が見られない場合に選択肢となることがあります。イソトレチノインはニキビ治療薬として有名ですが、酒さに対しても効果を示すことが分かっています。ある研究では、低用量イソトレチノインが酒さの病変数や紅斑を大きく減少させ、患者さんのQOL(生活の質)も改善すると報告されています [3]。ただし、この薬は催奇形性(お腹の赤ちゃんに影響を及ぼすリスク)があるため、妊娠を希望される方や妊娠の可能性がある女性には厳格な服用管理と避妊が不可欠です。
βブロッカー: 紅潮(flushing)を伴う赤ら顔には、内服のβブロッカーが有効な場合があります [2]。ただし、副作用として徐脈が生じ得るので日本では行われていないと思います。
αブロッカー外用薬:ブリモニジンという塗り薬が使われることがあります。これは皮膚の毛細血管を収縮させるため有効ですが、日本では自費治療となります。
プロバイオティクス: 最近では、腸内環境と皮膚の関連性を示す「腸-皮膚相関(gut-skin axis)」の考え方が注目されています。プロバイオティクスを組み合わせることで、酒さの重症度を示すPGAスコアが有意に改善し、さらに炎症を引き起こすサイトカイン(IL-8、TNF-α、KLK5)の減少や皮膚の水分量改善が認められたという研究もあります [7]。ドキシサイクリンとプロバイオティクスを併用することで、抗生物質耐性遺伝子の減少も認められたという報告もあり [7]、腸内環境を整えることが皮膚に良い影響を与える可能性があるということが報告されているようです。
2. 光・レーザー治療
内服薬や外用薬で改善が難しい、特に持続的な赤みや毛細血管拡張に対しては、光・レーザー治療が非常に有効な選択肢となります。
IPL(Intense Pulsed Light:インテンス・パルス・ライト):
当院でも採用しているセレックVは、フィルターを変更することでピーク波長を変え、目的に応じた治療効果を得ることができる光治療機器です。ヘモグロビン(血液中の色素)に選択的に吸収される波長を用いた場合は拡張した毛細血管に熱エネルギーを与え、血管壁を破壊して赤みを改善します [4]。赤みに対して、IPLは特に75%以上の高い改善率であり後述するPDLよりも優れているという報告がある一方で、治療中の痛みが比較的強い傾向にあるとされています [4]。当院では、Cellec Vという機器を導入しており、シミやそばかす、肌のハリ感といった肌全体の若返り効果も期待できる治療です [6]。
当院での治療アプローチ
武庫之荘ますだ皮膚科・美容皮膚科クリニックでは、患者さん一人ひとりの赤ら顔の原因と状態を丁寧に診察し、最適な治療プランをご提案しています。
例えば、赤みや赤ら顔を改善したい方には、以下のような組み合わせ治療をご提案することがあります。
- Cellec V(IPL光治療): 広範囲の赤みや毛細血管拡張にアプローチします。
- ターゲットクール(プルリアルシルク): 肌のバリア機能の改善や抗炎症作用が期待できる薬剤を導入することで、肌の敏感さを和らげ、赤みを鎮める効果を高めます。美容皮膚科学会などでの講演で、プルリアルが肌の赤みを抑えたとする報告が散見されます。手打ちのプルリアルよりも、痛みやダウンタイムを大幅に抑えられます。
- CLEAN&BLOOM エレクトロポレーション: VC(ビタミンC誘導体)、VB12(ビタミンB12)、HA(ヒアルロン酸)など、肌の炎症を抑え、保湿力を高める成分を電気の力で深部まで浸透させます。
- プルリアルデンシファイ(手打ち): 必要に応じて、肌の根本的な再生能力を高め、肌の厚みや弾力を改善する目的で、プルリアルデンシファイという製剤を直接手打ちで注入することもあります。これにより、血管の露出を物理的に抑え、赤みの目立ちにくい健康な肌へと導きます。美容皮膚科学会などでの講演で、プルリアルが肌の赤みを抑えたとする報告が散見されます。
これらの治療を単独で、あるいは組み合わせて行うことで、より効果的で持続的な改善を目指していきます。また、日常のスキンケアや生活習慣のアドバイスも非常に重要だと考えています。刺激の少ない洗顔料や保湿剤の使用、紫外線対策の徹底、刺激物(辛い食べ物、アルコールなど)の摂取を控えるということが良く指導されています。
まとめ
- 「赤ら顔」は酒さをはじめとする様々な原因で生じ、持続的な赤みやほてり、毛細血管の拡張、ニキビ様の皮疹を伴うことがあります。ニキビダニや免疫系の異常、血管の調節異常などが関与していると考えられています。
- 治療は内服薬(抗生物質、低用量イソトレチノイン、βブロッカー、プロバイオティクスなど)・外用薬(ブリモニジン)や光・レーザー治療(IPL、PDL)を症状に応じて使い分けます。特にプロバイオティクスは腸-皮膚相関を通じて皮膚の炎症改善に寄与する可能性が示唆されています。
- IPLとPDLはどちらも有効な治療法ですが、IPLは高い改善率、PDLは痛みの少なさにそれぞれ特徴があります。当院ではこれらの治療に加え、エレクトロポレーションや注入治療を組み合わせることで、よりきめ細やかな赤ら顔治療を提供できるよう努めています。
皮膚の悩みは、その人の自信や生活の質に深く関わります。私たちは、表面的な症状だけでなく、その奥にある原因と向き合い、一人ひとりの患者さんが心から笑顔になれるお手伝いをしたいと考えています。
参考文献
1. Jo CE, Finstad A, Georgakopoulos JR et al. "Facial and neck erythema associated with dupilumab treatment: A systematic review." Journal of the American Academy of Dermatology. 2021;85(4):948-955. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33428978/
2. Logger JGM, Olydam JI, Driessen RJB. "Use of beta-blockers for rosacea-associated facial erythema and flushing: A systematic review and update on proposed mode of action." Journal of the American Academy of Dermatology. 2020;83(2):630-639. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32360760/
3. King A, Tan MG, Kirshen C et al. "Low-dose isotretinoin for the management of rosacea: A systematic review and meta-analysis." Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology : JEADV. 2025;39(1):e7-e17. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39239956/
4. Zhai Q, Cheng S, Liu R et al. "Meta-Analysis of the Efficacy of Intense Pulsed Light and Pulsed-Dye Laser Therapy in the Management of Rosacea." Journal of cosmetic dermatology. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39240125/
5. Li J, Wei E, Reisinger A et al. "Comparison of Different Anti-Demodex Strategies: A Systematic Review and Meta-Analysis." Dermatology (Basel, Switzerland). 2023;239(6):951-965. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36310014/
6. Sales AFS, Pandolfo IL, de Almeida Cruz M et al. "Intense Pulsed Light on skin rejuvenation: a systematic review." Archives of dermatological research. 2022;314(1):1-16. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34609598/
7. Yu J, Duan Y, Zhang M et al. "Effect of combined probiotics and doxycycline therapy on the gut-skin axis in rosacea." mSystems. 2024;9(2):e0094723. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39475254/
- 執筆:増田泰之(皮膚科専門医)
- 武庫之荘ますだ皮膚科・美容皮膚科クリニック 院長
