ルビートーニング
ルビートーニングは、ルビーレーザー(694 nm)の特性を活かし、低フルエンス(低出力)で広範囲にレーザーを照射する治療法です。このアプローチは、主に色素沈着の改善を目指すものであり、特に肝斑や、肌全体のトーンアップなどに適用される場合があると考えられます。
シミの種類とレーザー治療の最適な適応は?
シミと呼ばれる色素沈着は日光黒子(老人性色素斑)、肝斑、後天性真皮メラノサイトーシス、雀卵斑(じゃくらんはん)=そばかすなど、多種多様です。まず患者さんのシミがどのタイプであるかを正確に診断することが治療の第一歩です。
日光黒子(老人性色素斑)
日光黒子は、紫外線曝露や加齢によって生じる茶色いシミです。このタイプには、Qスイッチルビーレーザーなどによるスポット照射が非常に有効であり、多くの場合、一度の照射で大きな改善が得られます。日本皮膚科学会などが作成する美容医療診療指針においても、日光黒子の治療にレーザーや光治療は強く推奨されています(日本皮膚科学会ほか, 2022)。治療後は一時的に濃くなり、かさぶたになって剥がれ落ちる経過をたどることが一般的です。
後天性真皮メラノサイトーシス
後天性真皮メラノサイトーシスは、真皮(皮膚の深い層)にメラニン色素を持つ細胞が存在する色素異常症で、多くの場合、両頬骨部などに左右対称に現れる褐色の小さな斑点としてみられます。これは肝斑と誤診されやすいのですが、治療アプローチが全く異なります。後天性真皮メラノサイトーシスに対してもQスイッチルビーレーザーによる治療は有効性が高く、美容医療診療指針では強く推奨されています(日本皮膚科学会ほか, 2022)。しかし、太田母斑(おおたぼはん)などと比較すると、治療後に炎症後色素沈着が生じやすい傾向があるため、照射間隔を4ヶ月程度空けるなどの十分な配慮が必要です。治療回数は複数回を要することが多いです。
肝斑
肝斑は、主に両頬に対称性に生じる色素沈着で、紫外線曝露や女性ホルモンが主な悪化因子とされています。肝斑の治療は、遮光や美白剤の外用、トラネキサム酸などの内服が基本となります。美容医療診療指針では、高フルエンスのQスイッチルビーレーザー照射が強い炎症を惹起し、肝斑を悪化させることが指摘されています。
ルビートーニング治療の考え方とは?
当院では、ルビーレーザー「Nanostar R」を導入しシミの種類や肌質に合わせて、ルビートーニング、ルビーフラクショナル、ルビースポット照射といった施術を提供しています。これらは全て保険適用外の自由診療となります。
ルビートーニングは、ルビーレーザーのメラニン吸収特性を活かし低フルエンスで広範囲に照射する治療法です。肝斑や肌全体のトーンアップ、後天性真皮メラノサイトーシス治療後の色調の均一化などに有効であると考えています。実はルビーレーザーを用いたトーニングは、低フルエンスでの照射であっても炎症後色素沈着のリスクがNd:YAGレーザーよりも高い可能性が指摘されていたため(Omi et al., 2012)、以前はあまり行われていませんでした。この論文ではルビーレーザーを4Jで照射していたためだろうと考えられます。現在は1.5J~2.0Jでの照射が可能です。つまりルビーレーザーの低出力化が進み、ルビートーニングが可能になってきた、というわけです。
治療を進める上での注意点としては、レーザー照射後の炎症後色素沈着や、まれに起こりうる色素脱失のリスクが存在すると考えられます(Lee et al., 2022)。特に、過剰な累積レーザーエネルギー、短い治療間隔、多すぎる回数はこれらの色素性副作用のリスクを高めることが知られています(Lee et al., 2022)。そのため肌の状態を常に観察し、適切な照射パラメーターと治療間隔を厳守することが不可欠だと考えられます。また、治療期間中は徹底した遮光ケアが最も重要であり、日常的な紫外線対策は欠かせない要素です。
まとめ
①ルビーレーザーは、その高いメラニン吸収特性を活かし、日光黒子や後天性真皮メラノサイトーシスに対するスポット照射、あるいは肝斑や全体の色調改善を目的としたトーニング照射などで使用されています。
②ルビーレーザーの低フルエンス照射が可能になったため、最近になってルビートーニングが肝斑治療の選択肢として行われるようになってきました。
③ シミの治療は非常に複雑であり、個々のシミの種類を正確に診断し、経験豊富な皮膚科専門医が肌の状態に合わせた適切な治療計画を立てることが重要です。当院ではルビーレーザーを用いたいろいろな治療オプションを提供しており、副作用のリスクを管理しながら丁寧な治療を行います。
参考文献
①日本皮膚科学会ほか.「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」日本皮膚科学会. 2022. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/biyou2022.pdf
②Lee YS, Lee YJ, Lee JM et al. "The Low-Fluence Q-Switched Nd:YAG Laser Treatment for Melasma: A Systematic Review." Medicina (Kaunas, Lithuania). 2022;58(7):981. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35888655/
③Omi T, Yamashita R, Kawana S et al. "Low Fluence Q-Switched Nd: YAG Laser Toning and Q-Switched Ruby Laser in the Treatment of Melasma:A Comparative Split-Face Ultrastructural Study." Laser therapy. 2012;21(3):189-194. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24610976/
④Aurangabadkar SJ "Optimizing Q-switched lasers for melasma and acquired dermal melanoses." Indian journal of dermatology, venereology and leprology. 2019;85(2):127-133. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30027914/
- 執筆:増田泰之(皮膚科専門医)
- 武庫之荘ますだ皮膚科・美容皮膚科クリニック 院長
