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たるみ


今回のブログでは、多くの方がお悩みであろう「たるみ」についてお話ししたいと思います。
当院の診療理念として、「病気に限らず、本人が悩むすべての変化を治療する」ことを掲げていますが、その中でも「たるみ」は特にご相談が多い症状の一つです。インターネットで調べてみると、様々な情報が溢れかえっていて、何が正しいのか、どの治療が自分に合っているのか、判断に迷ってしまう方も少なくないでしょう。

皮膚科学の世界では、「たるみ」という言葉自体が、様々な病態や加齢による変化を包括する非常に広い概念です。一般的に使われる「くすみ」という言葉が皮膚科学にはないのと同様に、単に「たるみ」と一括りにしてしまうと、その原因や適切な治療法が分からなくなってしまいます。
今回は、皮膚科専門医の視点から、「たるみ」の正体と、その治療についてできるだけ正確に、そしてわかりやすくお伝えできればと思います。

「たるみ」とは?皮膚の構造から考える

では、そもそも「たるみ」とは何なのでしょうか。
私たちの皮膚は、表面から表皮(ひょうひ)、真皮(しんぴ)、皮下組織(ひかそしき)という層で構成されています。このうち、皮膚のハリや弾力を支えているのが真皮と皮下組織、そしてそれらを支える土台となる表情筋や骨格です。

「たるみ」は、これらの構造全てが複合的に影響し合って生じるということが分かっています。
具体的には、加齢とともに次のような変化が起こります。

  1. 真皮の変化:真皮の大部分を占めるコラーゲンやエラスチンが減少していきます。これらの線維は皮膚の弾力やハリを保つための重要な要素ですから、減少すると皮膚が伸びやすくなり、元に戻りにくくなるというわけです。また、これらを産生する線維芽細胞(せんいがさいぼう)の機能も低下していくでしょう。
  2. 皮下組織の変化:皮下脂肪はクッションのような役割を果たしていますが、加齢によってその量や配置が変化します。脂肪が萎縮して少なくなる部位もあれば、重力によって下方へ移動し、特定の部位に「たまり」として現れることもあります。
  3. 表情筋とSMAS筋膜の変化:顔の表情を作る表情筋も、使われ方や加齢によって変化し、緩みが生じることがあります。また、皮膚と筋肉をつなぐSMAS(スマス)筋膜と呼ばれる組織も緩むことで、皮膚全体が重力に逆らえなくなり、たるみとして現れるようになります。
  4. 骨格の変化:長い時間をかけて、顔の骨格自体も少しずつ変化し、骨が吸収されて痩せることで、皮膚や脂肪を支える土台が小さくなります。これもたるみを悪化させる要因の一つと言えるでしょう。

このように、たるみは皮膚の表面だけでなく、その奥の組織に至るまで、様々な変化が重なり合って起こる複雑な現象です。

稀なケース:後天性皮膚弛緩症(こうてんせいひふしかんしょう)

極めて稀なケースではありますが、たるみが単なる加齢による変化ではなく、疾患の症状として現れることもあります。それが「後天性皮膚弛緩症(Acquired cutis laxa; ACL)」と呼ばれるものです。これは、皮膚が弾力性を失い、たるんで垂れ下がることを特徴とする非遺伝性の皮膚疾患です。日本では十数例程度報告があります。様々な炎症性疾患、自己免疫疾患、悪性腫瘍、感染症、薬剤などと関連して発症することが報告されています (Khodeir J et al., 2024)。このほかにも、Parry-Romberg症候群なども顔の皮下脂肪が萎縮する疾患として知られます。

もちろんほとんどのたるみは加齢によるものですが、急激な皮膚の弛緩や原因不明の広範囲なたるみが見られる場合は、我々医師はこのような稀な疾患の可能性も念頭に置くことが必要だと思います(本当にめったにありませんが)。

たるみ治療の多様なアプローチと最新の知見

たるみ治療には本当に多くの選択肢があります。美容医療が発達した現代では、切らない治療から外科的なアプローチまで様々です。患者さんのお悩みやたるみの程度、予算やダウンタイムの許容度によって、最適な治療は大きく変わってくるでしょう。

当院でも、患者さん一人ひとりの状態をしっかりと診断し、最適な治療法をご提案しています。いくつか代表的なアプローチとその効果についてご紹介いたします。

1. 真皮のコラーゲン再生を促す注入治療と併用療法

皮膚のハリを回復させる上で重要なのは、やはりコラーゲンやエラスチンの産生を促すことです。近年注目されているのが、ポリ-L-乳酸(PLLA)という成分を皮下に注入する治療です。PLLAは体内でゆっくりと分解されながら、自身のコラーゲン生成を刺激することで、肌のハリや弾力を改善する効果が期待できます (Kollipara R et al., 2020)。

2. 高密度焦点式超音波(HIFU)によるリフトアップ

HIFU(ハイフ)は、高密度の超音波エネルギーを皮膚の深層、特にSMAS筋膜や真皮層に集中的に照射することで、熱収縮を起こし、たるみを引き締める治療法です。これは、外科的な手術なしでリフトアップ効果が期待できるため、非常に人気があります。
二重の深さでHIFUを照射することで、上腕の皮膚のたるみを改善する効果が確認されており (Vachiramon V et al., 2021)、顔や首、下顔面のたるみに対しても、安全性が高く、軽度から中程度のたるみに有効であるとする報告があります (Friedman O et al., 2020)。即効性だけでなく、長期的なコラーゲン生成も促すようです。

当院では真皮とSMAS層両方に、同時に熱エネルギーを加えることができるオールタイトというたるみ治療機を採用しています。HIFUやRFとは異なり新しい機械なのでまだ論文ベースのデータは充分とは言えませんが、痛みが少ないこと、神経障害リスクがHIFUに比べて低いことから、たるみ治療の選択肢として有力であると考えています。オールタイトの効果については、論文などがあればまたご紹介しようと思います。

3. 目の下のたるみ(Baggy Lower Eyelids)へのアプローチ

目の下のたるみ、いわゆる「目袋」は、疲れた印象を与えやすく、多くの方が悩まれる部位です。たるみの程度にもよりますが、マイクロニードルラジオ波(MFR)やフラクショナルレーザー、スキンブースターなどといった切除を行わない治療が有効であるとする報告がみられます (Dou W et al., 2021)。これらの治療は、皮膚の引き締め効果だけでなく、肌質の改善にも寄与することが期待できるとされています。

治療を選ぶ際に私が大切にしていること

これほど多くの治療法があるからこそ、患者さんご自身で「これが一番良い」と判断するのは難しいものです。商業志向の強い美容クリニックでは、特定の治療ばかりを勧められたり、安価な料金を前面に出して誘客したりするケースも見受けられます。そのアプローチは美容医療をより身近にした側面もあると思いますが、行き過ぎないようにしなければなりません。美容のためとは言えリスクはありますし、実際にニュースでトラブルが報道され問題となっているためです。

私の目指す診療は、「流行や効率を追うのではなく、10年後、20年後を見据えて、当院を受診していただいた全ての方に責任を持てる医療を提供したい」というものです。たるみ治療においても、患者さんの年齢、たるみの程度、肌質、ライフスタイルなどを総合的に判断し、適切な治療計画を立てることが何よりも大切だと考えています。

治療にはそれぞれメリットとデメリット、そしてダウンタイムやリスクがあります。それを包み隠さずお伝えし、患者さんが納得して治療を選択できるよう、丁寧な説明を心がけています。

まとめ

1. 「たるみ」は複合的な要因で生じる皮膚の悩みです。真皮のコラーゲン・エラスチンの劣化、皮下脂肪の変化、表情筋やSMAS筋膜の緩み、骨格の変化など、様々な要因が絡み合って進行します。
2. 多様な治療法が存在しますが、たるみの原因それぞれをターゲットにした治療を選び、かつ個々の状態に合わせた適切な診断と選択が重要です。
3. 滅多にありませんが、加齢以外の疾患(後天性弛緩症など)が原因でたるみが起こることもあります。急激な変化や気になる症状がある場合は、皮膚科専門医の診察を受けることが大切です。
参考文献
 1. Khodeir J, Ohanian P, Feghali J et al. "Acquired cutis laxa: a clinical review." International journal of dermatology. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38924070/
2. Veldhuizen IJ, Budo J, Kallen EJJ et al. "A Systematic Review and Overview of Flap Reconstructive Techniques for Nasal Skin Defects." Facial plastic surgery & aesthetic medicine. 2021. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33650884/
3. Wu X, Cen Q, Wang X et al. "Microneedling Radiofrequency Enhances Poly-L-Lactic Acid Penetration That Effectively Improves Facial Skin Laxity without Lipolysis." Plastic and reconstructive surgery. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38051121/
4. Kollipara R, Hoss E, Boen M et al. "A Randomized, Split-Body, Placebo-Controlled Trial to Evaluate the Efficacy and Safety of Poly-L-lactic Acid for the Treatment of Upper Knee Skin Laxity." Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.]. 2020. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32852426/
5. Dou W, Yang Q, Yin Y et al. "A randomized, split-face controlled trial on the safety and effects of microneedle fractional radiofrequency and fractional erbium-doped glass 1,565-nm laser therapies for baggy lower eyelids." Journal of cosmetic and laser therapy : official publication of the European Society for Laser Dermatology. 2021. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34812096/
6. Vachiramon V, Triyangkulsri K, Iamsumang W et al. "Single-Plane Versus Dual-Plane Microfocused Ultrasound With Visualization in the Treatment of Upper Arm Skin Laxity: A Randomized, Single-Blinded, Controlled Trial." Lasers in surgery and medicine. 2021. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32770693/
7. Friedman O, Isman G, Koren A et al. "Intense focused ultrasound for neck and lower face skin tightening a prospective study." Journal of cosmetic dermatology. 2020. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32011076/
  • 執筆:増田泰之(皮膚科専門医)
  • 武庫之荘ますだ皮膚科・美容皮膚科クリニック 院長